同調する

 

制作をするとき、ほとんどは音楽を聴きながら手を動かしています。

 

特に集中したい時は同じ曲をリピートして。

曲の高揚感に駆り立てられ、奮い立つというか、

精神を研ぎ澄ますことができるから。

 

 

例えば、何か展示会や出展に向け、準備を進めているとします。

すると、多くの場合その回それぞれで曲が変化するのです。

 

納品の締め切りや搬入日は、重ならないようスケジュールを組んでいるため、

必然的に順番がやってきます。

 

一つ終え、二つ目を終え...。

 

その度に、気持ちの色味が移行するらしく、

それまで聴いていた曲が途端に耳障りになり、次の曲を選びます。

「次」という意識が自然と湧くのです。

 

同じ曲を繰り返す、という制作スタイルは

振り返れば大学時代からで、

最長だったのは卒業制作に励んでいる期間。

覚醒、憑依させるかのように

半年以上も、昼夜問わず一曲を浴びていました。

 

 

弾きもします。

 

幼少時から、私の感情の捌け口はピアノでした。

 

悲しみが溢れ、どうしようもなくやるせない気持ちを、

鍵盤を弾くことで発散していたのです。

そう、まるでパンク。

顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら。

きっとハタから見たら、ぞっとする光景でしょう。


 

弾けば、音が鳴り、連なり、重なり

耳と、自分に寄り添う心だけで十分。

 

いつも、日が沈んだ真っ暗な部屋

明かりは必要ありませんでした。

月の光か、何なのか、手元くらいはうっすらと視えます。

それでも目から入る情報を遮断したくて

瞑りながら、手に運動を委ねることもします。

 

1〜2時間すれば、自分の中から濁りがすっかり消え去っていて、

ケロッと何食わぬ顔で現実世界(大概夜なので照明の灯された居間や自分の部屋)に戻っていきます。

 

この一連の儀式的な行為は、今でこそ頻度が減ったものの継続しています。

 

朝やお昼に弾くのも大好きです。

青空を眺めながら手を動かすのは、楽器でも金槌でも何を手にしていても

格別に、最上級に幸せな気分です。

思わず笑みが溢れます。

 

四六時中 音楽を欲するわけでもなく、

仕事や車の運転を除く時間では

環境音だけでいたいです。

音楽は、何かしらへのスイッチになっているよう。

 

同調する、限りなく、それが一番らしい答えです。